鋼ワールドinアシュルク〜ルークSideその3〜





「錬金術?」

「あ?なんだアンタ錬金術を知らないのか?」

聞きなれぬ言葉にルークが復唱すると、エドワードは得意そうにふふんと鼻を鳴らして説明を始める。
だが小難しいことばかりを並べ立てられてもルークにはさっぱりわからなかった。疑問符を頭の上で飛ばしているルークに気付いて喋る口を止めたエドワードはガシガシ頭を掻いて、まあじゃあ見せてやるよというなり両手をパンと合わせる。そして掌を地面へ押し付けると眩い光が迸り、エドワードの手の中には小さな作り物がコロンと転がっていた。ルークは目を丸くして地面とエドワードの手とを見比べる。
地面の方はエドワードが掌を置いた場所だけ少し窪んでいる。それを指摘するとエドワードは作り物を放り投げてキャッチするというのを繰り返しながら再び説明を始めた。

この世界の法則は等価交換から成り立っているのだ、と。

「等価交換・・・」

「そう、何事も物を与えられればそれに見合う対価を払う。これは錬金術以外でも基本だ」

話すエドワードの隣のアルフォンスもそうだよねぇと相槌を打っている。
ルークはもう一度、等価交換と口の中で呟いて今この場所にはいない半身のことを想った。

アッシュが生きていれば、俺はアッシュと等価交換が出来るだろうか。
複製品である自分が被験者と同等の対価を支払えるかはわからないけれど。
同等の対価でなくても良い。せめて自分の奪ったものを返したい。



不意にルークの表情に翳りがさしたことに気付いたエドワードは方眉を上げて弟を見上げた。弟も何となく察したのだろう微かに肩を竦めて見せた。
そんなに馴れ合うつもりは無かったのだが、どうにも放って置けなさそうだ。
エドワードは胸中で盛大なため息をつくと、切り出した。

「そういやまともな自己紹介がまだだったな。オレはエドワード・エルリックだ」

「ボクは弟のアルフォンス・エルリックです」

「あ、えっと・・・ルーク・フォン・ファブレ」

「ふ〜ん、ルークな。なんかの本で読んだことがある。確か<聖なる焔の光>とかいう意味があったんじゃないか?」

「うん、まあ。そうだけど」

俺はそんな大層な人間じゃないし。ルークは自嘲気味に言ってエドワードの疑問を呼んだが、エドワードの方はその疑問を直接口にすることはしなかった。触れられたくないことは人間誰しにもある。それは自分たち兄弟も同じだ。

「で、ルークは何してたんだよ」

「えーと、街の散策みたいなものを」

「この街には観光できたの?」

アルフォンスに問われてルークは咄嗟に上手い言葉が見つからずに言いあぐねて

「・・・人探し、かな」

それだけを搾り出すように音に乗せた。

人探し、といってもその探している相手が生存しているか、この世界にいるのかなんてわからないのだが。
とりあえず探してみようとルークは考えていた。

「へえ、じゃあボクたちと何となく似てるね兄さん」

「あぁ、そうだな」

「エドワードたちも探してる人がいるのか?」

「いやオレたちが探してるのは人じゃなくて<方法>だ」

「方法・・・」

「そ、方法。ところで、オレたちはこれから司令部の方に行くからここでお別れだな」

「司令部?何か用があるのか?」

「あの忌々しい大佐殿に報告することがあってな」

そこまで言って何やらブチブチと文句を言い始めたエドワードに代わってアルフォンスが先を繋ぐ。

「ボクたちマスタング大佐のお世話になってるんです」

「世話になんかなってねーよっ!!!」

すかさず兄の横槍が入ったがアルフォンスはそれを黙殺した。

「色々とあって、それで」

「へぇ・・・」

兄弟から話しを訊いたルークは暫し思案してからじゃあ俺も司令部に行くと兄弟へ告げた。
当然、何故?と首を傾げる二人にルークは笑った。

「俺もマスタング大佐にはお世話になってるんだよ」

そういった瞬間、エドワードが物凄い表現しがたい顔をしたのが印象的だったと司令部に向かう途中アルフォンスへルークはこっそり話し、鎧は苦笑を漏らした。


















久しぶりすぎる更新…。

2008/03/12