<心機一転もまた良し、ってな>
「格闘術ってカッコいいよなー」
「・・・いきなりどうした」
「いや、闘技場で戦ったときに相手が武器使わないヤツでさ。何かカッコイイなーって」
「はっ、相変わらず単純なヤツだなてめぇは」
「ふん単純で結構ですよ、アッシュなんかガチガチ頭のクセにっ」
「・・・レプリカの分際で随分と物を言うようになったな。覚悟が出来てのことか?」
ジロ、とアッシュはルークを睨み剣の柄へ手をかけ、ルークは慌ててすみません嘘ですっと謝った。
アッシュは鼻を鳴らして柄から手を離し、歩き出す。ホッと胸を撫で下ろしたルークもその後を付いて行く。
「なぁ、アッシュ」
「・・・・・・・」
「アッシュは格闘術使えるか?」
「だったら何だ」
「・・・アッシュに教わろうかと」
「ざけんな」
「いや、本気で」
「一度この場で死んでおくか?糞レプリカ」
「・・・・・・じゃあ、いいよ」
本格的に据わった目をした被験者に、ルークはちぇっと舌打ちをして渋々引き下がった。
アッシュと別れた後、初めて入った本屋の中でルークはお目当ての物を探して店内を彷徨う。
しかし見つからない、と半ば諦めかけ項垂れて落とした視界に飛び込んだ本。
「あ、あったー!」
思わず本を取って声を上げてしまい、その直後店員から、店内ではお静かにお願いしますと言われ頭を下げた。
代金を支払いホクホクした気持ちで通りを歩く。途中でベンチを見つけ、そこに腰を降ろして紙袋から本を取り出し
早速読み始める。黙々と読み進めながら身体を動かして型を真似てみたりする。
どうやら物によっては案外はやく会得出来るかもしれない。
ルークはそう確信すると満足そうに笑った。
* * * * *
にっこにことそれはそれはとても楽しそうに笑っている金髪の青年が何やら自分を呼んでいる声が聞こえる。
ルークはベッドの上で胡坐を掻いてミュウを玩具に遊んでいた。時間を持て余し、暇つぶしにミュウを弄っていた
手元から横へ視線をスライドさせた。個室で取った部屋の入り口にガイが腕に何かを抱えて立っていた。ルーク
はちょっとだけ眉根を寄せたが、すぐにミュウを放り出し、青年の方へと歩いていく。近寄ってきたルークへ、ガイ
は持っていたものをずいと差し出す。それは一見何処にでもありそうなリストバンド。黒一色のそれには、白色で
丸い目と、ギザギザ尖った歯、らしきものがデザインとして入っていた。恐らくこれはルークの上着の背中のマー
クを模してあるのだろう。と、いうことはもしかしなくても、もしかするのか。そんな意味合いを込めて幼馴染と視線
を交えれば、相手は誇らしげに胸を張った。それは肯定の証。ルークはリストバンドを受け取って、その意外な重
さに目を丸くする。ずっしりと重量感のあるリストバンドに驚いているルークへ、ガイは得意げになったまま説明を
始めた。
いや、この間もう少し足速くなりたいって言ってただろ?だから俺なりにどうにか出来ないかと考えてみた結果が
コレだ。重量のあるものを身に着けていれば重さで身体が鍛えられる!それを常時付けててみろよ。そうすれば
外したときに身体が軽く感じられて、きっと足も速くなっているだろうからな。ちなみにそれは手首に付ければ剣を
振り下ろしたとき、体重に重さが加わって敵に与えられるダメージが増えるかもしれない。で、足首用が当たり前
だけど、足を鍛えるためのやつだ。
ぜひ活用してくれなっ!
ガイは一気に言うと、複雑そうなルークの表情は一切無視して彼の両手を取った。それから期待に満ちた眼差し
で使ってくれるよな、使うよな!!と視線でも訴える。ルークは胸中では、うぜぇと愚痴を零しはしたが当人に面と
向かっては言わない。おれ変わるから宣言をして以降、他人の好意は快く受け取ろうと決めているのだ。ガイは
当然、好意でしてくれている。それを断るなんて出来ない。てかしちゃ駄目だと思う。ルークはそこまで考えて一
つ頷いた。もしもこの場に死霊使いや被験者がいたら確実に、馬鹿だ阿呆だ屑がっと言うに違いない。特に最近
ルークへ執着しているらしいアッシュは、ガイがルークッル−クルークゥと騒ぐのを良く思っていないらしい。ルー
ク一行と出くわし金髪を視界に認めた瞬間、まるで条件反射の如く蹴りや拳で、間が悪いときには抜剣して切りか
かっていく始末。ちなみに間が悪いというのはガイがルークにスキンシップと称して抱きついていたりするときのこ
とだ。ルークはガイのスキンシップを何とも思っていないのかされるがままになっていて、それがさらに気に喰わ
ないアッシュは容赦ない攻撃をガイへ浴びせる。
そうやって痛い目を散々見つつも止めようとしないガイのしつこさに少しだけ脱帽したくなる。
そんなルークラブに拍車がかかり変態道を走り出しているマルクト貴族ガルディオス伯爵へ、ルークはにこりと
笑った。
一番気になったアッシュと自分との会話を何処で耳にしたのかを問うことはせずに。
* * * * *
ルークがガイからプレゼント?を貰ってから数日後。レベル上げの為にひたすら魔物を倒していたときのことだっ
た。
前衛にルークとガイが。後衛にジェイドとティアで敵が合計六匹。
戦闘人員よりも多い敵の数に、ガイは目の前の敵を斬りつけながら舌打ちをする。音素となって霧散した魔物に
は目もくれず次に狙いを定めた敵へ踊りかかっていく。その際に同じく敵中へ突っ込んで行っている赤毛の姿を
確認することも忘れない。走り抜けざまに魔物を一閃し、前方へ視線を投げる。ルークは魔物を二体相手に戦っ
ていた。正面から二匹と対峙しているようなので不意打ちは受けることはないだろう。後衛二人も各々魔物へ狙い
定めて攻撃を繰り出している。ガイが今戦っている魔物は既に弱っているので、もう直ぐ音素と還るだろう。そうす
ればルークの方へ助けに行ける。ガイは柄を持った右手に力を込めた。その時、後方で派手な爆発音が轟いた。
恐らくはジェイドの譜術。反射的にそう判断したガイは特に問題は無いか、と決め付けようとした。しかしその考え
はティアの悲鳴にも似た叫び声によって否定された。
「ルーク!」
「・・・っ?!」
ルークの名を訊いて今度は条件反射で赤毛の姿を探してしまう。煙が立ち込める中で目を凝らすと、白の上着を
血と泥で汚し、方膝をついているルークが魔物に囲まれていた。支えに使おうとしている剣は刀身が途中から折
れて無くなっている。状況に急いて赤毛が必死に立ち上がろうとしているのがわかる。だがルークが立ち上がるよ
りも先に魔物が彼へ襲い掛かることは間違いない。ガイは目の前の敵を素通りしてルークの元へ向かって走り出
す。それと同時にルークを囲む魔物も動きを見せた。触手を伸ばし、それをルーク目掛けて槍のように飛ばす。
間に合わない。
瞬時に悟ったガイが歯軋りする。誰もが最悪の事態を想定した。
「ルーク!!!」
「っ、そう簡単に・・・やられるかっての!」
ガイが叫んだのとほぼ同時にルークも動きを見せた。ズボンのポケットから何かを取り出し地面へ捨てる。捨てら
れたそれはドゴッと随分鈍い音を立てて地面へめり込んだ。めり込み具合からして、ルークが取り出したものが
相当重量のある物であることが窺えた。次いでルークはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。剣から手を離し素早く
その場から飛び退り、その一瞬後に触手が地面へ突き刺さる。ビイィンと真っ直ぐに糸が張られたように伸びた
触手を、ルークは躊躇せずに掴んだ。ぐい、と自分の方へ触手を勢い良く手繰り寄せる。地面から浮いて吹っ飛
んでくる魔物をルークは拳を握り締めて待ち構え、射程距離に入った瞬間、身体を捻り、魔物へ最大パワーの回
し蹴りをお見舞いした。大空高く舞い上がった魔物は音素となって消滅し、綺麗に決まった回し蹴りに、決まった
わね、とティアが呟く。ガイは呆気に取られ、足を止めてその場に突っ立っていた。その間にもルークは身に付け
た格闘術を実戦でフル活用すべく走り出す。その顔は無邪気な子供そのもの。だけど血が頬に付着しているの
で素直に可愛いとは言えない赤毛の姿にガイは方頬を引きつらせた。何やら迫力あるルークに慄いたのか魔物
が背を向けて逃げ出し始める。しかしルークは容赦ない。嬉々とした表情で跳躍するとそのまま魔物の上へ着地
する。踏み潰された魔物が悲鳴を上げるが、そんなこともお構いなし。やはり先程と同じように触手をがっしと掴ん
で、今度は魔物を振り回し始める。グルグル遠心力を利用して回り、最後にパッと触手を離す。魔物は遠心力も
あってか豪速で飛んでいき、ガイに直撃した。
「ぐはぁ・・・!!!」
直撃を腹部へ喰らったガイが魔物諸共後方へ吹っ飛ぶ。それを見たティアがやれやれと額に手を当て頭を左右
に振った。ルークは投げた後の体制で、あ。悪ぃガイ!と大の字で転がっている幼馴染へ叫んだ。ガイは片腕を
上げてそれに応じ、その後ピクリとも動かなくなった。魔物は吹っ飛んでいる途中に音素となって消えたので、ガ
イが襲われる心配もないだろう。ひとまず戦闘員代表者としてジェイドが合掌する。
「ラスト一匹!」
ルークはだっと走りだし、魔物に飛び掛る。赤毛が飛び掛る直前、魔物は目に見えて縮み上がっていた。それに
気付いたティアは敵とはいえ、哀れに思えてならなくて目元をそっと押さえた。どうか苦しまないように。そう願い
ナイトメアを謳う。気を失って苦しみを感じないようにとティアなりの配慮だ。しかしそれもそれで酷ですよねぇと胸
中でぼやいたのは死霊使い。口に出すことは決してしない。
最後の敵が消滅したのを確認すると、手の汚れを払い剣を拾いに行く。そのルークへジェイドが声をかけた。呼び
止められて振り返ったルークに歩み寄ったジェイドが首を傾げ
「いつの間に体術を?それと動きが依然と比べ物にならない位に速かったように思われたのですが」
「あぁ、俺、ガイに比べて足遅いだろ?だからガイに頼んで造ってもらった重りをつけてたんだよ」
ほらあれ、ルークが指差した先にある地面にめり込んだ某物。なるほど、では体術は?ジェイドのその問いにル
ークは頭の後ろで手を組んで嬉しそうに笑った。
「本読んで覚えたんだよ。今日始めて戦闘で使ったんだけど、結構イケる感じだったろ」
いっそ剣術より格闘術を極めようかなー、剣折れちまったし。真剣に考え出した赤毛にジェイドは笑ってそうですね
と相槌を打った。
「・・・・・・とりあえず、ガイの心配をした方が良いんじゃないかしら、ルーク」
「え、あ!忘れてた!」
ティアに指摘されたルークが踵を返す。
金髪の青年は倒れたまま、赤毛にすっかり忘れ去られていたことに嘆き、号泣していた。
小具熊さまよりリクエスト頂きました
『戦闘中にルークの剣が折られて絶体絶命の時、実は格闘術が得意
で拳の一撃で倒してしまうギャグ話(簡略化)』です。
あまりギャグは書かないので。慣れないながらも四苦八苦して書き上げました。
戦闘シーンも・・・もう少し表現を頑張りたいですね;;(汗
それでは、一万打企画へのリクエスト有り難う御座いました!
09.23
※この小説は小具熊様のみお持ち帰り可となっています。