<守るべき存在を守る為に>





ルークはカタカタと小刻みに震えてその場に立ち尽くしていた。

目の前に広がる凄惨な光景に愕然と目を見開き、唇からは意味の成さない音が零れ落ちる。



この状況を招いたのはだれ?

そこで倒れてピクリとも動かない、死んでいる人がいるのはだれの所為?

少し前までは街として存在していたものを一瞬にして消してしまったのは―――



「ルーク」

低い、聞き慣れた声にルークはビクリと肩を揺らした。のろのろと顔をめぐらせれば、そこには険しい表情をした金髪の男性が立っていた。
ガイ・・・、とルークは無意識に彼の名を呟く。ガイは一瞬眉をひそめたが、ルークへタルタロスに乗るように促す。
まるで操り人形のようにぎこちなく歩いてく赤毛の後姿を見つめていたガイはひっそりと呟いた。

「さて、どうしたものかね・・・」





*      *     *





タルタロスの甲板に立った同行者たちは皆が皆、ルークへ冷たい視線を向けていた。しかし唯一イオンだけはルークを気遣うような視線を送っていたが。
ルーク自身は俯いて誰とも目を合わせようとはしなかった。視線を合わせたら、ここに立っていることすら耐え切れなくなってしまいそうだったからだ。
殺傷力があるのではないかと思うくらいに張り詰めた緊張感が漂う中、ジェイドが口火を切った。
彼の唇から紡がれる言葉はルークの心をじわりじわりと切り刻んでゆく。
続いたアニスの言葉もさらにルークの傷を抉るように深いものへと変えてゆく。
ティアにも容赦ない言葉を浴びせられ、ルークはぐっと唇を噛み締めて零れ落ちそうになる涙を堪えていた。
そしてナタリアやガイの二人からも投げられた言葉。
この中で誰よりも付き合いの長い二人から言われた内容はどんな言葉よりもルークの心を傷つけた。
重いおもい沈黙が訪れる。
やがてルークは自分を正当化するために俺は悪くないと叫んだ。

「俺だけが悪いんじゃない!俺は悪くないっ・・・!!!」

血を吐くように叫び、ルークは頭を抱えてその場に蹲ってしまう。
同行者たちは呆れたようにルークを見下ろし、各々ルークを放って艦内に戻ろうとした。
艦内に続く扉が開かれ、
甲板にいる者以外、誰も乗っていないはずのタルタロスの中から人が現れた。

唖然として同行者たちは甲板へ出てきた者たちを見つめる。
だが視線の先にいる五人はそれをすっぱり無視してルークの元へ歩み寄っていく。



「ルーク」

低い、聞き慣れた声にルークはビクリと肩を揺らした。しかしルークは顔を上げず逆に頭を抱え込んで外界を遮断してしまう。再び名前を呼ばれるも、ルークはいやだいやだと頭を振って拒絶を続ける。
相手の声音がとても柔らかく優しく己の名を呼んでいることにも気付けずに。
すると今までとは違うもう一つの声がルークの肩に触れた。

「ルーク、大丈夫よ。私たちは貴方を責めたりなんかしないわ」

「・・・ティア?」

子供をあやすような少女の声音に、ようやくルークが顔を上げた。
そしてぽかんとする。
同行者がそれぞれ二人ずついるのだ。その異様ともいえる光景にルークの思考がフリーズする。
ただそんなルークの反応を予測していたのか、ルークの傍にいたガイが苦笑を零しながら言った。

「俺たちは未来から来たんだよ、ルーク。お前を守る為に」

「未来から・・・?」

「あぁ。アクゼリュスのことはお前の言うとおり、お前だけの責任じゃない。俺にだって非はあった」

ごめんな、ルーク。
ガイが顔を歪めて言葉を吐き出した。
ルークはひたすら驚くことしか出来なかった。
今、自分を囲むように佇んでいる同行者たちは皆、温かい目をしていて。少し離れた場所にいる同行者たちは冷たい目をしていて。
これは夢なのだろうかとすら考えてしまった。
傍にいる同行者は自分が思い描いた夢の存在で。遠くにいる同行者たちは現実の存在なのだと。
そんなことをぼんやり考えていたルークを現実に引き戻したのは死霊使いの淡々とした声だった。

「夢なのではないかと思ってしまう気持ちは、わからなくもありませんが・・・これは現実ですよ、ルーク」

淡々とした中にもほんの僅かに滲み出たような低く優しいジェイドの声にルークはボロボロと涙を流した。
泣き出したルークへティアと入れ替わるようにナタリアとアニスがルークの傍へ来る。
アニスも何かを堪えるように唇を真一文字に引き結んでいたが、ポツリと

「わたしはルークを責める資格なんて、無かったのに。ごめんね、ルーク」

そう言ってルークの胸元へ顔を埋める少女にルークは驚いて目を丸くした。ナタリアはルークの顔を覗きこんで申し訳無さそうに眉根を下げていた。

「ごめんなさい、ルーク。わたくしは過去に囚われて貴方と言う存在をちゃんと見れていませんでした。・・・ですが、これからは」

貴方は貴方なのだと。わたくしの中に貴方は居ます。ルークとして。

「ナタリア・・・」

思わずルークが呟いたとき、ジェイドが眼鏡を押し上げてガイへ意味ありげな視線を送った。ガイは小さく頷くと立ち上がって背後を顧みた。
ジェイドもまた薄ら寒い笑みを浮かべて

「貴方たちのお帰りはあちらですよ」

つぃと食指でルークたちの<元>同行者へ告げる。絶句して言葉を返せなくなっているかつての同行者たちに追い討ちをかけるかのように、再び扉が開いた。
一斉に扉へ視線が向けられる中、堂々と姿を現したのは紅蓮を髪色に宿した翡翠の双眸を持つ青年だった。



「さっさと失せろ、屑共が」

たった一言。尊大ともいえる態度で言い捨てた青年にルークの傍に居た同行者が小さく笑いを零す。

そしてかつての過ちを償うために未来からやってきた同行者たちは、いつまでもルークを守るように佇んでいた。


















ティアーズ様よりリクエスト頂きました
『仲間が逆行する話しor別世界の仲間が本編世界に現れる(皆ルーク大好き)な話し
』です。
仲間が逆行したという設定で書かせて頂きました。
ギャグにしようか悩んだ挙句、私的デフォルトのシリアスのような雰囲気となりました。
少々消化不良な点がありそうですが、気に入っていただけたら幸いです…。
また、大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした!!!(土下座

それでは、三万打企画へリクエストしてくださって有難う御座いました!

2008.03.22

※この小説はティアーズ様のみお持ち帰り可となっています。