<別に隠していたつもりじゃ、でもそうだったような・・・>






「何か、グランコクマって何時来ても癒されるよな」

「そうね。水の流れる音とか、聞いていて気持ちが良いわ」

旅の途中、武器や道具などの買い揃えのために立ち寄ったマルクト帝国の首都グランコクマ。

買出しはジェイドとガイが担い、ナタリアとアニスは二人で巷で噂されているというカフェへと行ってしまい、自然と
二人きりになったルークとティアは停泊してあるアルビオールへ向かう途中の橋で他愛の無い話をしていた。

こんな穏やかな時間は久しぶりだなと、ルークは微かに笑う。

水の上を跨る橋の上からルークは何気なく身を乗り出して流れる水へと指を伸ばす。
それを隣で見ていたティアは、身を乗り出しすぎて青年が水の中へ落ちてしまうのではないかと内心ハラハラし
ていたが、そんな彼女の心配を他所にルークはパシャパシャと水を叩いていた。水に指先を濡らしながらルーク
はちらりと隣に立つ少女を盗み見る。ティアは橋に寄りかかりながら、何処か離れたところを見ていた。彼女の視
線の先を追いかければ、そこには犬がちょこんと座っていた。再びティアへと視線を戻せば、彼女の頬が僅かに
赤く染まり、眼がうっとりとしているのが見て取れた。
普段は冷静さを保ち、常に厳しい物言いをする彼女が時折見せる年相応の少女らしい表情。















―――セントビナーへ向かう途中、食事の為にと休息をしていた時だった。

一人仲間のうちから離れたところにある木の根元へ寄りかかかって座り、ティアから渡された本を読んでいると、
その木の裏側から鳥の小さなさえずりが聞こえてきた。
何とはなしに木の裏側を見てみれば、そこには小鳥と一緒に栗色の長い髪を背中に流した少女の姿があった。
小鳥は力なく翼を広げ、ぐったりとした様に少女の掌に乗って弱々しげに鳴いていた。少女は掌に小鳥を乗せ、
もう片方の手をその上に翳し何事かを呟く。その呟きが終わると同時に、翳されていた手が淡く光る。
これは、よく怪我の治療などでティアが使用する譜術ーファーストエイドだ。
光が消えると、小鳥はパタパタと羽ばたきをし、先程までとは打って変わって元気にさえずりだした。
ピチチチと鳴く小鳥を見て、少女は嬉しそうに微笑む。指先でくすぐる様に小鳥を撫でながら笑う少女にルークは
話しかけた。

「そいつ、怪我してたのか?」

「る、ルーク?!」

声を掛けるとティアは今までルークが近くに居たことに気がつかなかったのか、驚いて小さく悲鳴を上げた。
そんなに驚くことかよとルークは思いつつも、未だにティアの掌で飛び跳ねている小鳥を指差す。

「怪我、治してやってたんだろ?」

「え、えぇ」

「こそこそやる必要なんてねぇじゃん。何でそんな陰でやってるんだよ」

「別に隠れてやっていたわけじゃないわ。この子が此処にいたからよ」

ティアはそう言うと小鳥を促すように手を高く持ち上げた。
小鳥は治った翼を広げ、天高く舞い上がっていき、やがて見えなくなってしまった。
空を見上げているティアを見ながらルークはポツリと

「前から思ってたんだけどさ・・・」

「何?」

「お前って可愛いもの好きだよな」

チーグルとかぬいぐるみ見てるお前顔って結構緩んでるんだぜ、とルークがさらりと言うとティアは「え・・・」と頬
を染めて俯く。黙り込んでしまったティアにルークは指摘してはいけないことだったのかと気まずくなり、どう言葉
をかけようかとあれやこれやと考える。
だが結局大した言葉も思い浮かばず、ルークは乏しすぎる自分の言語能力その他諸々が恨みがましくなってき
た。

・・・とは言っても自分が真面目に知識を蓄えていなかったことが原因であるから、自業自得としか言いようが無い
わけなのだが。

「何で可愛いものが好きってこと隠してるんだ?」

「え・・・、それは・・・。だって、似合わないとか言われそうだった・・・し」

「誰に?」

「・・・貴方によ」

「俺に?」

「そうよ」

ティアはふぅと息を吐くとルークと目線を合わせた。

「もう、いいわ。別になんて思われようとも・・・」

「いや。前の俺だったら確かに似合わねぇ、とか思ってたかもしれないけど。今は違う」

「・・・ルーク?」

「その・・・ティアが可愛い物好きっていうの、悪くない、と思う」

ルークは途切れ途切れにぼそぼそと言う。その後、言うだけ言ってさっさと立ち去る青年に、ティアは一時ポカン
とした後、くすりと笑いを漏らした。















橋を後にし、アルビオールへ向かっていると、ルークはあのさ、と立ち止まった。

「あ、あそこの店。俺ちょっと用事あるからさ。ティアは先に戻っててくれないか?」

途中にあった雑貨店を示しながらルークは直ぐに戻るから、と付け足す。

ティアがいいわ、と応えるとルークは雑貨店へと駆けて行った。

あのような店に一体ルークが何の用があるのかと不思議に思いながら、ティアはアルビオールへと向かった。





あそこの店は――・・・





直ぐに戻るから。その言葉通りルークは十分程度で戻ってきた。
ルークが何を買ったのか、少し気になったが余計な詮索はせずにグランコクマを出発することを告げる。
青年は解ったと頷き、立ち去りかけた少女の名を呼ぶ。

「これ。ティアが気に入るかと思って」

「何が入っているの?」

「チーグルの形したガラス細工」

「これを・・・私に?どうして・・・」

「いや。何か前にティアが欲しそうに見てたなぁ、とか思って」

要らないなら返して、とルークの手が伸びてきたがティアはそれを拒んだ。
ふるふると首を振って渡された小さな包みをきゅっと握り締める。

「有り難う、ルーク。大切にするわね」

そう言って微笑むと、ルークは照れ臭そうに笑みを零した。




















掌に乗せたガラス細工を見つめ、ティアは目元を和ませる。

「私が貴方を何時でも見てるって言ったけど。貴方も私のことを見ていてくれたのね」





「有り難う。ルーク」

貴方からの大切な贈り物、大切にするわね。











〜おまけ〜

「何か良い雰囲気だねあの二人」

「そうだな。微笑ましい感じがするよな〜・・・。本当成長したな、ルークの奴」

「ガイ。微妙に親馬鹿発言ポイよ、今の」

「ん、そうか?」

「アニス〜。ガイの親馬鹿は今に始まったことではないでしょう?」

「あ、そうーですね。言われてみればそーでした!」

「・・・俺はそんなに親馬鹿か?」

「自覚無しですか?ガイ」

「もう端から見てると見事なまでの親馬鹿っぷりだよ〜」

「私も・・・アッシュからプレゼントを貰えないかしら・・・」

「いやぁ〜・・・それは」



「無理(だな)(でしょ)(ですね)」


「・・・・・・・」


















3000HITのmikiさんへ『ほのぼのルクティア』です。
如何でしょうか?ティアの可愛い物好きに少し触れたお話に
してみたのですが。ほのぼの・・・に、なっていますか、ね;;
ヘボ小説で申し訳ない限りですorz

あぁ、次から次へと言い訳の言葉が・・・。


・・・キリリク有り難うございました!(逃