<forget-me-not15>
視察があるからと早々に出かけていったジェイドとガイ、それに女性陣たち。
俺たちは如何すれば良いと言うルークの問いかけにジェイドはにっこりと笑みを浮かべた。
「お二人でゆっくりしていて下さい」
結局二人して街に出ることに決め、宿の外へ踏み出した。
きょろきょろ物珍しそうに辺りに目を配るルークに対しアッシュは特に興味無さそうに前のみを向いていた。
しかし時折隣で小さく歓声をあげるルークを見て、小さく笑みを零していた。
暫くそうして歩いていたが、ルークの表情が僅かに曇りだした。
やはり先日と同じ様な視線を住人たちから向けられ、ルークは居心地悪そうに身を竦め、アッシュにぴたりと身
体を寄せる。そんなルークをアッシュはやや呆れた顔をして見ていた。
「・・・お前は少し気にし過ぎだ。大体、ここの住人と同じ存在のお前が何故そこまで視線を気にする必要がある」
「・・・・・・だってさ」
やっぱり気まずい、ルークはぼそりと言う。
再びアッシュが呆れて溜息を吐こうとした時、前方に複数の人影が立ちはだかっている事に二人同時に気が付い
て歩を止めた。立ちはだかって道を塞いでいるのは、どれも体格のいい男ばかりでいかにも友好的でないことは
目に見えて明らかだった。
「何の用だ」
不機嫌さを隠そうともせずにアッシュはぶっきらぼうに男たちへ向けて言い放つ。ルークは向けられてくる憎悪の
込められた視線に、無意識に自分の直ぐ傍にあったアッシュの手を握り締めた。アッシュはピクリと反応して、ル
ークの手をしっかりと握り返した。
大丈夫だと言い聞かせるように強く握り返してくる温もりに、強張っていたルークの表情が少しだけ和らいだ。
アッシュの問いかけに、一番最前にいたリーダ格と思われる男がこちらにひたりと指差して低く言った。
「お前は被験者だろう。何故この街を闊歩している。何様のつもりだ」
「別に闊歩している気などない。街の中を見ているだけだ」
それの何が悪い、アッシュは当然のように言って男たちを睨みつけた。
「・・・邪魔をするな」
男が放った低い声音よりも更に低い声音でアッシュが言う。迫力ある声音に相手が一瞬ひるんだ様子だったが、
リーダー格の一喝で気が持ち直される。
一人が何かの合図なのか、手を上げる。それと同時に男達が懐からナイフを取り出す。ナイフを見て瞬時に臨時
体勢に入る二人に男は嘲笑うように言った。
「たった二人で複数相手にやれるのか?」
お互い左右対象に提げている剣の柄へと手を伸ばしながら、アッシュとルークは同じ顔で不適に笑う。
「全然余裕」
同時に告げた赤毛二人の言葉を合図に男達が一斉に飛び掛ってきた。
向こうから仕掛けてきたとはいえ、街で暮らしている一般人であることには変わりないので実際に剣を抜いても
それで相手を傷つけることはしない。だが空いたもう一方の手で鳩尾に拳を叩き込んだり、蹴りで吹き飛ばしたり
といった打撃攻撃で容赦なく相手をねじ伏せていった。
地面に蹲る人間が一人、また一人と多くなっていきルークが僅かに隙を見せた時、倒れ伏していた男が急に立ち
上がりルークに向けて何か球体を投げつけてきた。それを反射的に腕でガードしたが、球体がルークに触れた
瞬間に弾けて中に入っていたピンク色の粉が降り注いだ。粉を吸い込んでしまい、慌ててバックステップしてその
場を離れる。
甘い、とも言える粉の匂いにルークは眉を顰める。
「何だよこれ。・・・甘い?」
「・・・ふん」
ルークが粉を吸い込んでしまったことを確認し、男は意識を手放す。甘い香りが身体から離れない事にルークが
戸惑っていると
「この野郎ッ!!」
叫び声と共に男がナイフを振りかざして襲い掛かってきた。それを剣で受け止めようとしたとき、ぐらりと視界が
揺らいだ。
間一髪で何とかナイフを弾き返し、勢いのままに回し蹴りを繰り出して相手をノックダウンさせる。
「・・・・・・っ、何だ、これ・・・ふらふら、する・・」
どさりと崩れるように座り込み、ルークは揺れる視界を直そうと頭を振る。視界に映る手がぶれる様に見える。
・・・何かのクスリか?
少し離れたところで別の男と対峙していたアッシュはルークの異変に気が付き、急いで目の前に居る男を伏して
ルークの元へ向かう。
その僅かな距離で、自分よりもルークに近い場所に居た男がナイフを手に近付いていくのを見て戦慄が走った。
ルークは男の気配に気が付いた様子は無い。
「ルークッ!!」
自分でも驚くような大声で名を叫ぶ。
ルークにナイフが振り下ろされる寸前に、アッシュは自分の身体を男とルークの間に滑りこませた。
・・・あぁ、御免なさい。としか言い様が;;
変な部分で話が途切れたような感じですみません。
アッシュ〜・・!!!
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